届かない願い。
何度、この言葉を言っただろうか
「好き」
「愛してる」
あなたがくれないもの
ねだったってくれないもの
他のものだったらちゃんとくれるのに
まるでオレはあいつのだからと拒まれているみたいで嫌
ネェあとどれくらい言葉にしたらくれる?





「秀くん大好きvV」
「オレも」

また嘘つかれちゃった
ホントは奥さんしか見てないのに
なんで私にそんな事言うの?
偽りの好きを貰えても嬉しくない
けど、偽りの愛でも縋っていたい
そう願ってしまう
貴方のそばにいたいから

「柊、明日の学校は何時からだ?」
「もう、二人でいるときは鈴って呼んでくださいよー」

ほらまた
私との約束忘れてる

「ごめんな?鈴」

そう言って私にキスをして誤魔化す
嬉しいけどやっぱり嫌
名前で呼ぶのは奥さんと娘さんだけって言われているみたいで
なんか悔しい

「で、何時からなんだ?」
「昼からです」
「じゃあもう少し頑張ってもらってもいいなー」
「秀くんは?」
「確か、9時からじゃなかったかな?」
「怪しいなぁ、もう」
「9時からです。ハイ」
「それじゃ寝れないじゃないですかー」
「いいの!大丈夫だから」
「寝てくださいよーただでさえ寝てない……ん……」

最後まで言い終わってない私に煩いとばかりにキスをしてきた
やっぱりこの場合は奥さんだったら最後まで聞いてるのかな?とか
いろいろなこと考えてたら私の体から離れた

「鈴はオレのことホントはどう思ってんの?」
「え?」
「ちゃんとわかってるから」
「何がですか?」
「考え事しながらしてんの」
「じゃあ聞きますけど、私のことどう思ってるんですか?」
「好き」
「嘘」
「嘘じゃないって」
「じゃあ奥さんのことはどうなんですか?」
「…………好き」
「…ちょっと用事思い出したんで帰ります」
「え?ちょ…鈴!?待って」
「ごめんなさい」

そういって足早に秀くんの家を出た
こんな関係なんて続かないって思ってた
秀くんから奥さんが好きって聞いて泣きそうになった
泣いてる姿を見せて秀くんを困らせたくない
その一身であの部屋を出てきた
ずっとずっといたいあのぬくもりのある部屋を
ホントは泣いて縋りたいけどそれを出来るのは奥さんだけだから

「バイバイ、秀くん」

私はもう行くこともないだろう秀くんの部屋を見上げて言った





もう会うこともないけど貴方のためにメールを作る
そして、美羽にも…
ごめんね、美羽
幸せになるって約束したけどなれなかったや
美羽は私の分まで幸せになってほしい
いつだって優しかった美羽には
迷惑かけた美羽には
いっぱいいっぱい幸せになってほしい
そう想いをこめながら携帯で文字を打っていく
メールを作りながらも涙は止まらなくて
未練なんてないと思っていたこの世界にも自分なりの未練があったんだなって考えたら涙がもっとあふれてきて
生きたいって思った
けど、偽りの愛情なんてもういらなくて
言葉だけの愛情なんていらなくて
だから、私はここに来た
あの時と風景が変わってなくて嫌気がさす
ビル街の屋上は日が少し昇ってるのに肌寒い
ここから落ちたら確実に命を落とす
あの時は美羽に助けられたけど
今度はちゃんと死ねるよね
当たりを誰も来ないか確認をしてから携帯とかばんを置く
そして、私は飛び降りた





エンド
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